








ステートメント
その光景は、道すがら忽然と顔を出す。
知らない誰かの生活の知恵。
自然現象の小さなうつろい。
生き物の貪欲な本能。
植物のしたたかな戦略。
その光景は、生きとし生けるものの境界線上に生じる。
ときに手を差し伸べ、ときに抗い、ときに溶け合い、
ときに淘汰され、駆け引きに終わりはない。
毎日を生きながらえるために。それぞれの生を全うするために。
明確な解を求めれば、緊張が走る。
曖昧に滲むことで、何かが紡がれる。
劇的な良いことが起こらなくてもいい。
劇的な悪いことさえ起こなければ。
今日も日が昇り暮れてゆく。




◎作品について
ここ5年間で撮り溜めていた日常の写真をまとめました。その間、世の中では歴史に刻まれるような様々な出来事があり、人々は自分自身の精神・身体・利益を守るため、また家族やコミュニティなどを想い、「ふつうであるため」に行動しているように、私の目には映りました。
「ふつう」ってなんだろう?
人によって、種によって、立ち位置によって、時代によって、関係性によって答えは様々で、その境界では争いが生じたり、笑顔が生まれたり、様々なドラマが起こります。
身の周りを見渡してみると、そこにはニュースで流れるような一大事は滅多にないけれど、小さな境界線が無数にあり、生と生の駆け引きにドラマを感じます。そして私はシャッターを切らずにはいられないのです。
この作品を通じて、自分以外の多くの他を認識するため、またその事実に向き合い「ふつう」の概念を拡張するため、私は日々写真を撮っているのだと気付きました。
一歩踏み出せば、あらゆるものが新しい視座を与えてくれるのです。
◎写真集について
右脳と左脳をフル稼働して編みました。写真集を作ることは僕にとってデザインと印刷のトライアルという側面もあり、一切手抜きなしで正面から向き合って作りました。